(ネタバレ有)「君の膵臓をたべたい」を読んだら思いがけず泣いてしまった。

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今話題になっている住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」を読みました。
タイトルがかなりキャッチーですよね。ファーストインパクトを与えるぞ、っていう気概を感じます。

この作品、どうやら「小説家になろう」に投稿された作品のようです。
ラノベよりは若干文芸寄りだけど、文芸よりは若干ラノベ寄り、という印象の本でした。
会話文が連続していたり、登場人物のセリフが結構ラノベ寄りでしたが、情景描写やストーリーの展開、結末なんかは文芸寄りでしたね。

ストーリーに対しての感想

桜良は病気で死ぬんではなく、通り魔に殺されるんだろうなというのは途中で予想が付いてしまいました。
というのも、途中で急に通り魔の話が出て来たので、どうしても何かの伏線だろうと思わざるを得なかったからです。

主人公(志賀春樹)と桜良が良い感じに蜜月を楽しんでいたところに、急に通り魔に殺される・・・。
物語に没入していればしている程、読み手の喪失感はかなりのものだと思います。
実際に予想が出来ていたとは言え、私自身も結構な喪失感がありました。

桜良の退院後のデートということと、残りページ数から察するに恐らく最後のデートになるだろう・・・。そしてこの最後のデートで、主人公と桜良の間で作者が読者に伝えたかった事が書かれるんだろう、と思っていました。
と思いきや、絶妙なタイミングで通り魔に刺されて殺されてしまう、と・・・。
「え、これどうやって締めるの・・・?刺されるにしてもこのタイミングなのかよ・・・」
と、読んでいてちょっと混乱してしまいましたね。(笑)

しかし、この物語は桜良が残した共病文庫が綺麗に締めてくれる結末となりました。
作者が伝えたかったことは、共病文庫に書かれている「君」への文章になっているんだと思います。
「人と人との関係性」とは何なのか、という作者の考え方が、この小説では書かれていたように思えます。

この本は、一言で言うと「主人公の成長物語」

この本は主人公(志賀春樹)の成長物語と見ることも出来ると思います。
勿論、成長させてくれたのは桜良ですね。
桜良の存在があったから、主人公は自分の殻を破ることが出来た結末になっています。

この本の最後に「もう怖くはなかった」とありますが、これは主人公が桜良のことを「桜良」と呼ぶことがもう怖くない、という描写です。
主人公は人と関わることを避けていましたが、これは自分の殻に閉じこもるという一つの防衛手段を取っていたと捉えられます。
桜良の名前を呼ばなかったとは、その他烏合の衆と区別化を図りたくなかったため。
いずれ失ってしまう桜良の名前を呼び、特別視してしまうことによって、桜良を失った時のダメージを受けるのが怖かったんでしょう。
しかし共病文庫を読み終わった段階で、「彼女を必要としていた。彼女と沢山心を通わせた」と、桜良が主人公にとって本当に特別な存在であったことを認識するに至りました。
(主人公はとっくに気づいていたんだと思いますが、共病文庫を読むことにより、はっきりと認識するに至ったのでしょう)

人と心を通わせる、関係性を持つことの特別さを知った主人公は、桜良のお願いということもあり(この部分が大きいですが)、一年越しで恭子と交友関係を持つことになります。
そして最後に桜良の名前を呼び、「もう怖くはなかった」で綺麗に締められている、という物語ですね…。

本当に綺麗に書かれている物語で、感動しました。
ストーリー自体は重いのですが、読後の爽快感はなかなかです。
勿論単なる成長物語として見るだけではなく、死生観や人との関わり方等についても、色々と考えさせられる事がある一冊でした。

幅広い年代の方にオススメ出来る一冊です。

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