ルックバック – 時間軸と世界線に関する考察と感想メモ

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この漫画、2つの世界線から成り立っているのは誰しもが気づくと思うけど、世界線による事象や時間軸の違いについて少し考察をしてみた。

あまりにもすごいものを読んだ直後の衝動を残しておきたいと思い、メモを残します。
個人的な考察・感想のメモなので、あしからず。

異なる世界線が存在する根拠

「ifの世界が描かれてるんだからあるだろ」ってだけではなく、もう少し細かに読み解いてみようと思った。

根拠はカレンダーとノートのメモで把握できる年度と、美大への入学年度に矛盾があること。
2つの世界線は以下のとおり。
①2人が卒業式の日に出会ってシャークキックを連載する世界線(正史の世界線)
②京本を助ける瞬間まで2人が出会わない世界線(ifの世界線)

①は小学4年生の時点で2006年。
壁に掛けられているカレンダーから判断できる。15頁目2コマ目)
7月1日が日曜日となるのは2007年で、この時藤野は5年生で必死に絵を描いている。その後、事件が起きたのは二人が20歳の時。(77頁目)
ストレートで美大入試に合格して事件が起こる世界線。
こちらでは京本が殺害される。

②の世界線は小学四年生の時点で2002年。
122頁目で京本が読んでいる4コマは藤野が小学四年生の時に連載したものだが、
これが①の世界線とは異なり、2002.6.11と記載されている。
明らかに作者による時間軸のズラしが見て取れる。
こちらでは京本は2012年の入試に合格しておりこの時点で20歳。(106頁目1コマ目)
藤野に出会わなかったことで、引きこもりが長引いたのだと思う。

どこで世界線が切り替わったのか

作中でたった2回しか出てこないオノマトペ、そして京本の部屋に滑り込んだ4コママンガがキーになっていると思う。

オノマトペ

30頁目2コマ目の「ガタンッ」で藤野→京本の認識が発生。
これは両者が小学校卒業時に出会っていて、①の世界線に直結。

②の世界線に繋がるのは99頁目3コマ目の「ピンポーン」。
この時は京本→藤野の認識が発生せず、二人はこの時点で出会わず。
事件の際、藤野が京本を助けるときに初対面。

世界線①の4コママンガ

上述した通り、「ガタンッ」により藤野が京本を認識しドアの前まで行き、その場で書いた4コマ漫画が京本の部屋へと滑り込む。(33頁目)

この時の藤野と、ドアの向こうの京本の世界線は同一の世界線①で繋がっている。

この時滑り込んだ4コマ漫画は破られておらず、ラスト4コマ目で京本の死んだ姿が描かれている。
これは京本が死んでしまう世界線を示唆していると思われる。

世界線②の4コママンガ

世界線②では小学校卒業時に二人は出会わない。

しかし世界線②の京本も、4コマ漫画を受け取ることになる。(96〜99頁目)
これは、京本が死んだ後の世界線①から受け取っているもの。
(世界線①で破られていない4コママンガを小学生の時に京本が受け取り、廊下のスケッチブックに挟まれていたものを京本の死後に藤野が発見。これが世界線②に送られた)

この4コマ漫画は①世界線のものとは異なり、2〜4コマ目は破られており、「出てこないで」のコマのみが描かれている。

その文言通り京本は部屋から出てこず、二人は事件発生のその時まで出会わない世界線となっている。

作中、たった二つのオノマトペ。
京本の部屋に滑り込んだ二つの4コママンガ。

これが世界線を分けた要因になっていると思う。

最後に

残念ながら結末までのメインストリームは①の世界線になってしまった。

世界線①から世界線②に送られた1コマの漫画により世界線②が新しく生まれた(ルックバックした)のかもしれないが、現実は虚しく過去に戻ることはできない。
残された人たちは、それでも進んで行くしかない。

作者が伝えたかったのは②の世界線が存在すると考えることの大切さなのかもしれない。
「ルックバック」が、京アニ放火事件の被害者追悼のメッセージを込めた作品というのは明らかだと思う。
個人的には、この②の世界線を示唆することが作者なりの追悼メッセージだったのではないか、と思ったり、思わなかったり。

何度でも読み返すことになると思うので、また気が付いたことがあったら追記していこうと思う。

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