【ネタバレ感想】映画『すずめの戸締まり』

【ネタバレ感想】映画『すずめの戸締まり』 – 見る人は選ぶけど、個人的には傑作

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2022年11月11日公開の新海誠監督の最新作、「すずめの戸締まり」を早速見てきました。
公開初日なだけあってほぼ満席。IMAXの方は埋まっていたので次回以降頑張りたい。(今週は満席で無理)
個人的にはとても面白く見ることができ、満足度は非常に高かったです。

すごく笑えたし、すごく泣けたし、すごく感動しました。
「君の名は。」や「天気の子」にあったようなド派手なシーン(スパークルとかグランドエスケープのような)は無いものの、一つ一つの描写が深く心に刻まれるような。
何度も見返したくなるような映画だと思いました。

震災

取り扱っている題材の問題で、観る人を選ぶ作品ではありました。
主題が”震災”だからです。

何度なく起こる地震とアラート。
そして津波災害の後を彷彿とさせたシーンなど。
公式Twitterだけでなくシアター入り口に注意書きがされるなど事前告知が徹底されていた理由がよく分かりました。
強いトラウマが残っている人には視聴がかなり難しいと思われる、そんな映画でした。

そして鈴芽自身が、震災によって母親を亡くすという過去を持っています。

物語が進むにつれて、鈴芽は徐々に過去を思い出していき。
黒く塗りつぶされた日記帳。夢に出てくる常世の風景と、母親らしき人の影。そして過去の自分の姿。

何度も繰り返される地震描写で、どうしても3.11を意識せざるをえなかったわけですが・・・。
東京から車で宮城に向かうシーン。
鈴芽が故郷に帰るとなって、てっきり南下していくかと思ったら向かっているのが埼玉方面。
この時点でじわじわと、「もしかして東北に向かうのでは」と思い始め。
そして宮城という決定的な単語が出てきて。
ついに出てきたのは、黒く塗りつぶされた日記帳に記されていた3月11日の日付。
ただの地震や災害を描いていたわけではなく、この映画は”3.11という震災”を取り扱っていたんだと、改めて気づかされました。

そして過去の自分に出会うシーン。
夢で見ていた母親らしき姿は実は自分自身だった、というこの伏線回収はさすがに鳥肌が立ちました。

しかしこのラストシーンを最後まで見た時、新海監督がここで一番に表現したかったのは時系列操作の巧みさではなく、鈴芽が過去の鈴芽自身に向けたメッセージなんだとしみじみ思いました。
震災が起こった事実は消えないけれど、その事実とはお構いなしに時間は前へ進む。
自分も前へ進んでいく。その先で色んな人に出会う。色んな事がある。
過去の自分は絶望の淵にいるけれど、それでも明日へ向かうしかないし、明日へ向かった先に鈴芽がいる。(鈴芽の明日、というセリフ)

そして過去の鈴芽に渡したのはこのセリフだけではなく、遺品の椅子を渡した点。
この椅子は常世を渡って、これから先も鈴芽に受け渡されていくんだと思いますが、「時間も世代も先へ進むけれど、風化させてはいけない何か」というメッセージがこの椅子にはあるんじゃないか、と思いました。
単に震災によって足が一本欠けているというキャラクター設定だけではなく、足が一本欠けているという事実が過去を思い出させてくれる、事実を風化させない何かなんだと思います。
そしてこの映画自体も、あの震災を風化させないための一つなのかと。

そういう意味では、その土地に残されている人々の声を聞くという閉じ師の仕事は、事実を風化させないための仕掛けとよくマッチしており。
そんな閉じ師である彼が椅子の姿になったというのはなかなか粋なキャラクター設定ですね。

ダイジン

このキャラについては、もう一度映画を見返してダイジンの心情を深堀したいなぁ、と思いました。

ダイジンの心情の個人的な解釈としては以下。

・神として要石として封印されていたが、鈴芽に開放され優しくされることで好意を抱く
・鈴芽に愛されたい(鈴芽の子になりたい)が故に、鈴芽が好意を抱いている草太は邪魔であるため要石の呪いをかける
・「人がいっぱい死ぬ」などの発言はただ事実を述べていただけ
・ダイジンが各所の後ろ戸を開けてミミズを解放しているように見えたのはミスリード。鈴芽が後ろ戸を閉める手伝いをするため、現地へ先回りして鈴芽たちに追いかけさせていた。
・鈴芽のことが好きで一緒にいたい。草太は邪魔。自分の代わりに草太が要石になれば自分は鈴芽と一緒にいられる。そこに悪意はない。
・サダイジンに窘められ、一緒に常世へ向かう。
・草太のためなら自分が要石になることも厭わない鈴芽を見て、また自分が要石になることを決意する。(ここ一番切なくて泣いてしまった)

サダイジンは東京に刺さっていた要石。(ですよね・・・?)
九州のダイジン、東京のサダイジンのそれぞれ一本ずつの要石だった。
しかしダイジンがサダイジンの要石を解放し、その代わりに草太を要石とした。(常世に刺したことで二本分の効果だった?)
で、サダイジンがダイジンのところに現れたのは、ダイジンへお説教するためですかね?
要石の役割を放棄しているダイジンを車に乗せ、一緒に常世へ向かうよう行動していたように見えます。(サダイジンはダイジンと一緒に、また要石になるつもりだった?)
これによって環の黒い感情があふれ出てしまった理由がよく分かっていないので、再履修したい。

ロードムービー

九州は宮崎からフェリーに乗り愛媛へ。
愛媛からヒッチハイクで神戸に向かい、そこから新幹線へ東京へ。
そして東京から宮城までオープンカーで移動。カーミュージックはレトロ感たっぷり。

こんなの見たら日本を車で旅行したくなっちゃいますよね。
私、Chefっていうアメリカ映画のロードムービーが大好きなんですが、こういうロードムービー見ると長旅したくなってしまいます。

各所で出会う人たちのキャラクター性も味があっていいんですよね。
人間味があっていいというか、本当に性格がいい人たちばかりというか。
令和でコロナ禍の今の時代においては中々できないようなコミュニケーションであり、距離感だと思いましたが、人との出会いって本当にいいなと思えるストーリーでした。

東京から宮城へ向かう時の芹澤(神木隆之介)の何とも言えない歌声も良かったですよね。ドライブで歌っている時のようなリアル感がたまらなかった。
芹澤は、大量にファンがつきそうな性格してましたよね・・・。
実は2万円の件は、のところとか。そんなチャラそうな見た目でその性格なの、ズルくないですか??

最後に

というわけで最初から最後まで楽しませていただきました。

最初の戸締まりをしたシーンでタイトルが出てくるところ、いい演出でしたね。
そういえばタイトル出てきてないな、なんてことも忘れたタイミングであの演出だったのでハッとさせられました。

本当に面白かったのですが、題材が題材だけに賛否は分かれそうというか。
厳しい意見も多いとは思うのですが、それは新海監督も覚悟しての作品作りと思いますし、そういう意見も含めての題材だと思うので。
ひとまず見終わって感想を書きなぐり、自分自身が現時点で消化している感想は出せたので。
他の人の感想や考察も見て、また少しずつ消化していきたいと思います。

ひとまずもう一回見ようと思っています。
この点に着目してもう一回見たいなぁ、と思っているのは以下。

・環の感情があふれ出た理由(サダイジンがなぜ作用したのか)
・常世のラストシーン、意味ありげに描写されていた2匹の蝶。(その他のシーンでも、蝶の描写は多かった)

次は夜遅くに一番後列端の席でメモ取りながら見るのも面白そうだなぁ、とか思ってます。

また気づいた点や感想が浮かんできたら、追記していこうと思います。

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