【※若干ネタバレ※感想】シギサワカヤの「君だけが光」は人生を考えさせられる名著だった。ただのGL作品集と思うことなかれ。

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そこそこネタバレ内容がありますので、ご注意を。


シギサワカヤ著の「君だけが光」。

以前からシギサワカヤの本は良く買っていたのですが、GL作品集を出したということで飛びつくように購入。
ということで先程読み終わったのですが・・・これは名著と言う他ないでしょう・・・。
この本、ただのGL作品集と思うことなかれ。

この本は大別すると、2つの物語が描かれています。
前半は美容師の女性が主人公のストーリーで、結末としては二人が添い遂げるハッピーエンドの形。
後半は美術関連の学校・仕事に携わる女性が主人公のストーリーで、結末としてはハッピーとも言えるし寂しいエンドとも言えるが、単純な「寂しいエンド」だけでは語れない、儚さと充実感に満たされるエンドになってます。

前半はスラスラと読める感じのストーリー。
特に考えずに読んでいて楽しめるといえば楽しめるし、最終的には二人くっつくので単純な満足感は高い。

しかしこの本でオススメなのは、圧倒的に後半のストーリー。

後半のストーリーのおおまかな内容としては・・・。

美術専攻の学科に通う女子高生の八田(主人公)は、とある出来事からクラス内で孤立してしまった崎谷と知り合うことになる。
廊下に張り出されていた八田の絵を過去に見て実はファンだったということで、八田に会いに美術室に来た崎谷。
美術室で気まぐれで絵を描いてみた崎谷だが、隠れた崎谷の絵画の才能に八田は驚かされる事になる。
その後八田と崎谷は親交を深め学校生活を共にするようになり、元から友達が少ない八田と、孤立している崎谷は、二人きりで過ごす事が多くなる。

美術大学に進むため絵を描き続けるものの、スランプに悩み続けていた八田。
美術の先生に言われたのは、「”あの頃みたいな絵”が描ければいいのにね」という一言。
”あの頃みたいな絵”を崎谷が描いたものとは知る由もない一言に、八田は激しい嫉妬心に襲われる。

嫌なことは連続するもので、崎谷をクラス内から孤立させた原因が解消され、崎谷は八田以外の友人とも交流するようになり、その事がひどく八田を苦しめる。
才能に対する嫉妬、自分だけのものにならない苛立ちから、八田は崎谷を拒絶する。
拒絶したまま時は過ぎ、クラスは離れ、その後接点を持たないまま二人は卒業し大人になる。
崎谷は医学部に進学したようだが、そんな話も風の噂に聞く程度でしかなかった。

16年後、大人になった八田は絵を描くという夢を追いかけながら、販売員の仕事に就いていた。
崎谷の事がずっと心残りではあるものの、今となっては何をしているのかも分からない。
そんな時に、昔の知人から崎谷の噂話を小耳に挟むことになる。
その噂話は八田を驚かせるに足る内容で、16年の時を経て八田は崎谷に一本のメールを送る。

・・・・・・・・・・・・とここまでが中盤であり、後半からがシギサワカヤ氏の伝えたかった事が詰め込まれている形になってます。
上に書いたのは主人公たちが16歳だった高校生時代から社会人時代の一部分で、最終的には老人時代まで展開されるストーリーになってます。

中盤部分までガッツリネタバレしちゃってますが、この話は最後まで読んでこそです。
ちょっと面白そうだなと思った方は是非買って読んでみて下さい。後悔はしないはず。
重めなストーリーが苦手な人には合わないかもしれませんが・・・人生を考えさせられる一冊ですので、苦手意識があっても読んでみて欲しい。
どこの部分が人生考えさせられんの?って話ですが・・・。そこは八田、崎谷が生きた人生を読むことで分かるはず(笑)

シギサワカヤの本って、読んだ後に眠れなくなるような重たい話が多くて凄く好き。

ちなみに最後の一コマ。八田が最後に言おうとしていた一言。何なんでしょうね。
私は「光」かなと思ってます。

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