※ネタバレ有り。閲覧注意です※
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 5巻 – しめさば
2021/6/1発売、最終巻5巻の感想記事となります。
既刊の感想記事は以下リンクから。
完結しましたね。
1巻を読んだのがつい最近のような記憶が。
でも4巻出るまでに一日千秋の思いで待ったりしたこともあったなぁ、と思い返してもみたり。今となっては懐かしい。
読みたかったストーリーはすべて読めて大満足。
しかし細かなあれこれは読者にゆだねる形になっていて、多すぎない、けれど少なすぎることはないという。
5巻はがっつり吉田と沙優メインの話になったので、今まで出てきたキャラクターたちは数年後の姿を少し見るだけに留まったわけですが、この数年に何があったんだろう、というのはまた短編集が出でもしない限り語られることはないわけで・・・。
三島との
ここ数年でいろいろとあった
っての、気になってしょうがなさすぎるんですが・・・
読み終わった後も色々と考えることができる作品ってのは至高ですよね。(個人的な性癖)
さて、では本筋の感想を。
これほどまでに納得のいくラストがあるのか、ってくらい最高のラストでした。
ライトノベルとして素晴らしい着地だったと思います。
これが純文学だったり一般小説だったりすると・・・また違う結末だったりするんだろうな、とも思いましたが、これはライトノベルなのでそこらへんには触れず。
母親の問題だったり、いじめだったり、体を売る話だったりと題材的には暗いものが目立ちますからね・・・。
未成年を恋愛対象として見ていない(どちらかというと見てはいけない、という吉田の観念?)という点からズレたラストにはならないだろう、とは思っていました。
だってそうなってしまうと、これまで吉田が大切にしてきた沙優への気持ちや、沙優が信じて頼ってきた気持ち自体も裏切ってしまうことになるので。
じゃあ大人になってから恋愛対象として見ればいいじゃないか、というのはそれはそうで、実際にそういうラストだったわけですが・・・。
そんな単純な予想の通りになるわけないんですよね。だってひげひろですよ?(信頼度高)
なるほど!そうだよな!と思わせてくれたのは、数年後に沙優と再会したシーンの以下の文章。
大人っぽい衣服に身を包んだ、美しい女性
女性なんですよね、もう。
記憶の中にある彼女とは違うという・・・。
出会い方もシチュエーションも同じで、変わらないものはあれど大きく変わった吉田と沙優の関係性。
吉田の独白にもあった、「沙優とはなんだったのか」に対する答え。
その答えはまだ出ていない、と。
女子高生の沙優だけではなく、大人になった沙優と歩んでいくことで初めて、吉田は沙優に出会ったことに答えを出せるんだろうな、と思いました。
北海道のカフェで飲んでいた抹茶オレやコーヒーが混じり合っていく様子。
夜の学校で、沙優の半身を照らしていた月の光。
最後まで読み終わって、あの混ざり合っていく様子は過去と未来をつないでいく予感だったんだなぁ、と気付かされました。しみじみ。
それにしても、屋上のシーン。
お互いが覚悟を決めるあのシーンは、さすがに泣いてしまった。
あの場所に行くのに、沙優にどれだけの勇気が必要だったことか・・・。
そこに辿り着く勇気を与えてくれた吉田。
そして最後にはその吉田に助けを求め、吉田もそれを了承して窓の向こうへと身を乗り出す。
あの屋上で起きたことが、沙優にとってどれだけ大きな出来事だったか。
それに踏み込むことは沙優の人生の大部分に踏み込むことだと分かっていても、吉田は踏み込んだわけですし。
そのことを沙優は分かった上で吉田を頼ったわけですからね。
北海道に沙優が帰ってこれで終わりの関係になるなんて、お互いにそうは思っていなかったはず。たとえ吉田が表面上はそう思わざるをえなくても。
冒頭でも書きましたが、三島と色々あったって書いてたけど、色々あったんだろうな・・・。
4巻の時点で三島の中で整理が終わった気持ちのようにも思えていたけど、最後の一区切りを付けるための儀式があったのかもしれない。
もっと三島の活躍が見たかったと言われれば、「それはそう」って叫んじゃう。(読みたかったストーリー全部読めたって言ってた奴)
後藤さんとはくっつかなかったものの、付かず離れずみたいな距離感のようでしたね。
沙優のことが引っかかっていたから、とは書いてはいないものの背景にはあるだろうな・・・。
「彼女を忘れようとしながら、ずっと考えていた」、と書いているくらいですから、忘れようと思っても忘れられるものではなかったはず。
ずっと覚えていてね、っていう沙優の書き置き、効果抜群。
最後に
うーん、本当に終わってしまった・・・。
あっという間に駆け抜けたような感触がある・・・。
世間では色々と物議を醸した作品だったようですが、私は純粋に楽しめる素晴らしい作品だと思いました。
アニメの方も、どうやら完結までやりそうな雰囲気ですね。
ものすごく待った原作民からすると、なんだか羨ましい笑
逆にアニメしか読んでない人は、原作を読んでほしいなぁとも思う。
しめさば先生の次回作、もう決まっているようです。
わ!
ガガガ7月刊の情報が出たみたいですね🐟
錚々たるメンツの中に、なんとしめさばも混ぜていただいております……!
光栄なことに、大活躍中のイラストレーター緜さんと組ませていただき、現在鋭意製作中です!
お楽しみに🙌 pic.twitter.com/IsTy3ERX5K— しめさば (@shimesaba_novel) May 18, 2021
ひげひろもこれだけ楽しませていただいたので、こちらもぜひ追わせていただこうかと。
アニメが終わったら、いよいよ本格的にひげひろロスになっちゃうな・・・。
どうしよう・・・。
また短編集出してくれてもいいんですよ?(懇願)
あとがきにも書いていましたが、この本を読んで人と人との”出会い”というものは奇跡的なものだと強く思わされました。
出会う人は自分で出会えないし、今仲良くしている人や一緒にいる人も、出会いは偶然だったり。
でもそういう出会いがないと今の自分や自分を形作る様々なものがないことを思うと、出会いだけでなく自分自身もまた奇跡的なバランスで成り立っているんだなぁ、と。
そういったことに気が付けたり、思うことができただけでも、この本に出会えてよかったと思います。
しめさば先生。次回作も楽しみに待っております。
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