【ネタバレ感想】やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) – 素晴らしい原作補間。心が浄化される一冊だった。

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※ネタバレ有り。閲覧注意です※

やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) – 入間人間

2019/5/10(金)に発売された「やがて君になる 佐伯沙弥香について(2)」
やがて君になる、の外伝ノベライズ。
待ちに待った第2巻がようやく発売となりました。

そして巻末では第3巻の制作決定告知が!
発売日同日にTwitterの方でも、第3巻制作決定の告知がありましたね。

感想

原作では描かれていなかった佐伯沙弥香の心情が精緻に描写されていて、正に”ファン歓喜”の一冊になっていましたね。

佐伯沙弥香について(1)を彷彿とさせるシーンなんかも多かったり、原作の時系列を超えて、大学入学後の沙弥香の姿が描かれていたりと。
”外伝”と言えないくらいの原作感がある・・・!

私は4月末に発売された原作最新話40話を読んでから本作を読んだのですが、、、
これ、40話読んだ後じゃないと結構なネタバレ感がありますよね(笑)
侑と燈子が結ばれるという結末ありきの内容になってましたので・・・(笑)
まぁその結末は予想できそうなものではあるので、ありっちゃありなのかな。

原作では描かれていなかった沙弥香の心情に深く踏み込んだ内容になっていたわけですが。
やがて君になるのメインテーマである”好き”という気持ちについて、沙弥香も思い悩み、そして結論を出していた点。
侑も燈子も、そして沙弥香も。全員が全員、”好き”という気持ちが何であるのかについて模索していたとは。
沙弥香の悩みって、燈子の悩みと同じ悩みだったんですね・・・。
変わってしまう相手、今見ている相手とは本質が違う相手を、自分は好きになれるのか・・・という疑念。

燈子の場合は「相手が好きでいてくれるのか」
沙弥香の場合は「相手を好きになれるのか」
というところが視点の違いですね。
お互いの恋愛感の違いがあって非常に面白い。
この視点の違いがあったからこそ、原作の方でもあのような三角関係になってるんですね・・・。

”なぜ沙弥香が踏み込めなかったのか”
外伝ノベライズ第2巻にして、この描写がここまで奥深く掘り下げられることになるとは思いませんでした。
入学時点から、どれだけ燈子に惚れ込んでしまったのか、ということが数多く書かれた上で、燈子の向こう側を覗き込んでしまったら、離れてしまうのではないかという恐怖心。
燈子の姉にすら嫉妬するくらいですから、想いの強さがどれだけなのかが良く分かりますね・・・。
そして、あの時の燈子は、まだ大きく変化する前でしたからね。
沙弥香のこの恐怖心は正しかったのでしょう・・・。
「私は恐れた 小糸さんは踏み込んだ」を思い起こさせる描写でしたね・・・。

そして本作で一番印象深かったのは”平行線”、ラスト付近のシーンでした。
原作14話「交点」を彷彿とさせる単語。
沙弥香は平行線として沙弥香の隣を歩み続けることを、”間違っている”と分かっていながらも。
燈子が変わり続ける瞬間をただただ待って、その選択をした。
それが失敗だったと分かっているけれども。
大学生になった沙弥香は、「それでも人を好きになるということを、もっと知ってみたい」と言うんですよね・・・。
過去の選択は結果的に失敗だったのかもしれないけれど、その選択を後悔しない沙弥香の心。
なぜこの子が報われないのか、そんな気持ちにならざるをえない・・・。
心が綺麗すぎるよ佐伯沙弥香さん・・・。

最後に。
発売前の紹介文でも描かれていた『彼女』とは一体誰だったのか。
これ、ラストの大学生シーンになる前と後で、意味合いが少し異なっている気がします。

本作ラストの一文は「彼女たちに出会えたからだった」。
ラスト直前の、3年生になった時の一文は『彼女』と出会ってからだった。

ラストでは複数ですが、直前は『彼女』の三人称単数です。

あくまでも個人的な解釈ですが、ラスト直前の『彼女』は燈子。
そしてラストの『彼女たち』はメインとしては燈子と侑。そして今まで出会ってきた女性たちを指していると思います。

ラスト直前、燈子の後ろ姿を見送りながら、また失敗してしまったことを沙弥香は悟ります。
この失敗を悟ったのは、もちろん侑が踏み込んだからではあるのですが。
ここでは燈子に想いを馳せつつも、侑の顔は”滲むような光に覆われてすぐには見えてこなかった”んですよね。
この現状になった事実を、そして侑の存在を、沙弥香が飲み込み切れるまでの時間が足りなかった・・・のかもしれません。

しかし大学二年生になった沙弥香は、侑のことを”忘れられるはずもない後輩”と語っています。
高校生のときとは違って、燈子よりも会う頻度が高い上に、心の面でも近くなったと言っている。
沙弥香にとって侑の存在を綺麗に消化出来たからこそ、ラストでは『彼女たち』となっているのではないかなぁ、と。
侑と燈子だけではなく、水泳ちゃんや千枝先輩がいたからこそ、沙弥香の恋愛観が形成されているという事実もありますし。

ここの部分を読者に思考させるっていうのが、読み物として素晴らしいですよね・・・。

というわけで、以下気になったシーン等々。

色々と気になったシーン

いいわよ堂島くんシーン

該当シーンはありましたが、「いいわよ堂島くん」は言ってくれませんでしたね(笑)
あえて言わせなかったんだろうなぁ・・・(笑)

習い事以外も中途半端に終わっていく

63ページの一文。
水泳ちゃんや千枝先輩の事でしょうね。
沙弥香の過去への後悔が垣間見える一文・・・。何気ない一文が深すぎるんですよね、入間先生・・・。

沙弥香は優しいなぁ

102ページの燈子の一言。
この頃から、燈子は燈子ですね(笑)
沙弥香が踏み込んでこないと分かっているからこその一言。
139ページの「心地いいね」の一言なんかも、同じですね。

美人

113、114ページの沙弥香と燈子の掛け合い。
お互いに美人だと言い合うシーンですが。
ここの沙燈の絡み、めちゃめちゃ好きなんですけど・・・(鼻血)

じゃんけん

じゃんけんのシーンで、燈子が

そっか。私は、さっきパーを出さないといけなかったんだ

というセリフがありますが。
原作17話「私未満」の冒頭で澪と燈子がじゃんけんをするシーン。
あの時、澪が出した手は”パー”でした。
澪になろうとしている燈子としては、澪と同じ”パー”を出さなければいけなかった。
澪に成り代わろうとしている燈子の心情、そして澪になりきれていない燈子の実情がよく分かる一言ですね。

飛べもしない鳥のように空を仰ぐばかりで

原作序盤での侑の心情と似てるんですよね、この表現。
羽根が生えたみたいにフワフワするのかと期待していた侑の心情。
飛べなかったのは沙弥香も侑も同じですね。
依然しっかり地面を踏みしめていた侑。
空を仰いでばかりだった沙弥香。

大学生になった時には距離も心の面も近くなったという二人。
やはり似たところが色々あるんでしょうね・・・。

文芸部員

沙弥香のことを一方的に知っていた女子部員、沙弥香ファンなんですかね・・・?
結局このシーンが回収されることは無かったですが、意味深な一幕でした。

そんなことが、あった

186ページの一文。
意味深な一文だったので色々と深読みしてしまいましたが。
将来的に現れる、侑のことを言っているのかなぁと。

私が燈子にまつわることで、関心を捨てることなんて一つもない。そんなことが、あった。

沙弥香が二年生になった時、燈子にまつわる存在として侑が現れますが。
あの時の沙弥香は侑を直視出来なかったでしょうしね・・・。
そういった意味での、未来の時系列から見た沙弥香の自省なのでしょうか。

男子に告白されて応えるつもりはなかった

沙弥香の恋愛対象が女性のみであると明確に分かる一文。
心臓にヒビが入ってからなのでしょうか。
分かりきっていたことではありますが、その後の二次創作界にも大きく影響を与えそうな一文でしたね(笑)

顔がいい

沙弥香に告白した男子生徒の一言。
こいつはよく分かってる。
あくまでも個人的意見ですが、やが君の中で一番顔が良いのって沙弥香だと思うんですよね・・・。
圧倒的美人だし・・・。ほんと、顔がいい。

いつかの私と同じだ

それは想いの強さは異なっていても、いつかの私と同じだ

好きな人のために何かをしなければいけないと思う、226ページの沙弥香の心情。
千枝先輩のことですね、これ。
沙弥香の心の中に、千枝先輩のトゲが刺さり続けていることがよく分かる。

最後に

素晴らしいノベライズでした。
原作ファンとしては大満足だったんではないでしょうか。

しかもさらなる続編制作決定ですよ!

大学時代の侑と燈子の関係性についての話も、出てきたりするんじゃないでしょうか。

一体次はどんな女性と出会うんでしょうね・・・。
大学の後輩の女の子とのお話でも、かなり面白そうですが。
発売時期いつなんだろ・・・。

次の「やがて君になる」感想は、今月末の本編41話ですかね。
5/26の生徒総会イベントもありますが。
それでは、また近々!

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